フェラーリ F355 レザーシートの修理事例をご紹介します。
車の乗り降りでどうしても革が擦れてしまう運転席左側のサポート部分のレザーリペアとレザークリーニングを依頼されました。
レザーシートの修理とクリーニングだけでなく室内全体のクリーニングも依頼されておりましたので、今回はシートは取外しての作業となります。
先ずはレザーシートの汚れを革専用のクリーナーで落としていきます。
クリーニングの前後の違いを分かりやすくするためにレザーシートの真ん中にテープを貼りましたが、違いは一目瞭然だと思います。
綺麗になった部分が元々のシートの色合いです。
(この後レザーシート1脚クリーニングしています)
ステッチも擦れてささくれていましたので、毛羽だった部分をハサミでカットします。
レザーシートの擦れている部分を研磨紙で削り込みます。元の塗膜を削ってできる限り傷や擦れを除去します。
この際、ステッチを傷つけないように丁寧にマスキングテープで糸を保護して作業します。
次に塗料の調色を行います。
インターパシフィックではドイツ製のレザー専用の水性塗料を使用しています。
数種類の原色を調合し、色を合わせます。
一度でぴったりの色に合うことはまずありませんので、微調整を加えながら数回、色を調整します。
次に、レザーシートのシボ模様を再現させるために模様の型をとります。
革にはそれぞれ表情があり、シボという模様があります。革の傷を削ればシボ(模様)が無くなり表面はつるつるになってしまいます。そこをいくら綺麗に塗装しても修理した部位だけ模様が無くなり、いかにも直しましたという風になり、きれいな仕上がりにはなりません。
レザーシートの中でシボ模様が同じ部位を見つけ、そこから型をとって修理部位のシボ模様を再現させます。
グレンマーカーという特殊なペースト状の樹脂を使って押印します。
フェラーリ F355のレザーシートのシボ模様の型がしっかり取れました。
今回のフェラーリ F355のレザーシートの傷は深いものではなく、研磨紙で削ったことで傷はほとんどとれてしまいました。
残った浅い傷は液体の充填剤を塗りこんで埋めます。
液体の充填剤は傷を埋めるパテの役割と、塗料が革に染み込まないようにシールするプライマーサフェ―サーの役割を果たします。
塗装作業に入ります。まずはサイドサポートの内側を塗装します。
フェラーリ F355のレザーシートのサイドサポートはステッチが2本ありますが、レザー部分と一緒にステッチも塗装してしまうと、縫い糸まで塗装され仕上りが悪くなりますので、ステッチに塗料がかからないように工夫してマスキングテープを貼り、数回に分けて塗装します。
次にステッチとステッチの間の狭い部分を塗装します。
そしてサイドサポートの外側を塗装します。3度に分けて塗装しました。
ステッチは元々はレザーシートと同じ色でしたので、最後にステッチにもさっと薄く色をかけ、風合いを整えます。
レザーシートの別の部位から型取りしたグレンマーカーを使って、修理した部位に型押しを行います。
ヒーターガンでグレンマーカーを温め、レザーシートに押し付けます。
型押しするタイミングは、ケースバイケースです。充填剤(パテ)を塗った後工程で型押しする場合もあれば色を塗った後工程で型押しする場合もあります。
傷が深く充填剤で表面がつるつるになってしまう場合には塗装する前に型押し、足りなければ塗装中に型押しする場合もあります。
最後は艶消しのクリア塗装で仕上げます。塗料が乾くと艶が消えしっとりとした風合いに仕上がります。
今回のフェラーリF355の運転席は、座面にも小傷が数か所あり、座面と背もたれを広範囲に塗装しています。
レザーの弾力もご覧の通りに自然な感じになり、新車の時のような質感に仕上がりました。
フェラーリ F355の運転席のレザーシートの修理は、シートの脱着費用やルームクリーニング代は別途で消費税込み66,000円となりました。
この度はインターパシフィックにフェラーリ F355のレザーシートのリペアとクリーニングをご依頼下さり誠にありがとうございました。